「台湾海峡」王育徳著、1983年発行、日中出版社
この本は簡単にいえば台湾における文学=小説の戦後の傾向と問題点を書いたものである。(1945年から70年前後まで)しかしこの文学史から透けて見える大きな問題を著者は書いている。
歴史的にいえば、日本は太平洋戦争に敗北して、1945年に台湾の植民地から撤退する。その代わりに中国の蒋介石の国民党政府が200万ともいえる人数で台湾に逃げるように入ってきた。その国民党がまた台湾を植民地であるかのように統治した。
続きを読む “台湾人の生き苦しさを知る”自分を生かそう
「台湾海峡」王育徳著、1983年発行、日中出版社
この本は簡単にいえば台湾における文学=小説の戦後の傾向と問題点を書いたものである。(1945年から70年前後まで)しかしこの文学史から透けて見える大きな問題を著者は書いている。
歴史的にいえば、日本は太平洋戦争に敗北して、1945年に台湾の植民地から撤退する。その代わりに中国の蒋介石の国民党政府が200万ともいえる人数で台湾に逃げるように入ってきた。その国民党がまた台湾を植民地であるかのように統治した。
続きを読む “台湾人の生き苦しさを知る”邱永漢「濁水渓」中公文庫、昭和55年(1980年)(初出、昭和29年、1954年)
この本は直木賞候補になったそうだ。「香港」(昭和30年、1955年直木賞を取る)
概略
この本は、台湾出身の邱永漢のほぼ自伝のような小説である。時代はほぼ正確に戦前の東大の学生時代、米軍の焼夷弾を受けて東京が焼け野原になる処、特高のために牢屋に入ることもありまた学徒出陣という徴兵を拒否して逃げ回る主人公が日本の敗戦を目撃して台湾へ戻り、やっとの平和の日々が来るかと思いきや、また暗転して中国からきた国民党の横暴、腐敗を目の当たりに見て、民衆が怒って大暴動を起こす1947年2月28日の大事件のあたりでそれの余波というところで終わる。主人公は民族も政治も主義もないところに住みたいという絶望的な感情に揺り動かされて香港へ密航するところまでが描かれている。
続きを読む “台湾の小説、濁水渓”今回はちょっと硬い本を取り上げる。
改定「社会科学概論」寺尾誠、慶應義塾大学出版会、1989年の初版を97年に改定新版として出版。
この本は、私が大学の時に師と仰いだ、寺尾誠教授の本で、我々が学生の時にはこの種のまとまった本は彼は書いていなかった。5年前に亡くなったのだが、一昨年大学で3周忌といったか追悼の会があった。その時にあとで書いてある,哲学者花崎こう平氏への手紙をまとめた「歴史哲学への誘い」という本をいただく。かなり分厚い本だ。そういうこともあり、一度しっかり寺尾さんの本を読むべきと思ってこの本を手にした。
続きを読む “価値貫徹型の教授寺尾誠”空爆下のユーゴスラビアで、-涙の下から問いかける、ペーター・ハントケ 訳元吉瑞枝
同学社2001年6月発行
以前書いたコソボ紛争の中でペーター・ハントケの名前が出ていたのでこの人の本を読んでみたい、と思った。(ブログ;コソボを知るにはこの本を読むしかない)
この本は、ユーゴスラビア(1999年当時の)へのNATOの空爆下に、作家であるペーター・ハントケが2回現地視察をした時のある意味悲しい記録である。言葉が言葉にならない。切れ切れだ。物語れないのか、名詞を羅列するようになっている。
続きを読む “ユーゴスラビア空爆の悲劇”アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート著「帝国」ーグローバル化とマルチチュードの可能性、水嶋一憲他訳、以文社、2003年発行、約580ページ
(この本を一か月かかって一応読了した。読了したが、この本を読んでわかること分からないこと分かりにくいことなどあって、全部理解できたというつもりはないし、逆にわからなさが重要なのかとも思えてくる。その後、手にした「さらば”近代民主主義”政治概念のポスト近代革命、アントニオ・ネグリ著2008年、作品社、を読んでからのほうがよくわかる仕掛けである。)
続きを読む “資本主義の終焉はどうなる”「北京のアダムスミス」(21世紀の諸系譜)ジョバンニ・アリギ著、作品社、2011年発行、(原著は2007年発行)673ページ(ページがふってある箇所だけで)
この本は、ネグリの大著、「帝国」をさらに上回る厚みである。
この本を読むのにやはいり一か月はかかった。長い本である。
著者のはじめ、にあるように前著「長い20世紀」と「近代世界システムにおけるカオスとガバナンス」に続く続編として書かれたものだ。
続きを読む “衰退する米国、勃興する中国”南海の王国琉球の世紀、東アジアの中の琉球、角川選書、平成5年(1993年)発行
(陳舜臣、森浩一、山折哲雄、濱下武志、高良倉吉、田中優子、井沢元彦)
この本の構成は、まずそれぞれの専門分野の部分を発表し、それをもとに、7人で議論をする。議論の方は2部構成で1、琉球王国の誕生と形成、2東アジアの中の琉球。
なぜこの本を読むのか
続きを読む “アジアの中の沖縄、新しい視点”陳舜臣、神戸わがふるさと、講談社、2003年発行
第一部と第三部がエッセイとなり、真ん中が小説となっている構成である。
このエッセイの最初の文章が素晴らしい。なんという悲劇、なんという歴史。
「慟哭の世紀」という表題、よくよく見るとこれは序文であった。
ここに戦争後、台湾にも岩波書店のような立派な本屋を作るから戻って来いと言われた。本屋の仲間は5人いるという、君も来ないかといわれた。しかし婚約者がいるのですぐには帰れないと言って考えておくという事にした。
続きを読む “台湾、慟哭の歴史”長い20世紀(資本、権力、そして現代の系譜)、ジョバンニ・アリギ著、作品社、2009年発売、原著は1994年発行、(1995年のアメリカ社会学会、世界システム政治経済部門賞受賞)、5200円
この本は約600ページの厚みのある本である。この本を読み始めてから約1か月半である。最初は図書館の本で済ませていたが何回も延長できず、ついにネットオークションで安く買うことを画策して、手に入れた。
評価の高い本である。
なかなか読み応えのある本である。内容は世界経済史である。単なる経済史ではなく、今後の資本主義の行方やアメリカの覇権的資本主義はどのように成立してきたのか、今後どうなるかなどという現代の問題意識を満載したような経済的歴史でありかつ理論化も狙っているのではと思われる。世界システム論の一つだ。ウォーラーステインなどと一緒に仕事をしたようだ。またこの本にしょっちゅう出てくるが地中海論で有名なブローデルの影響をかなり受けている方のようである。また「帝国」のネグリとは立場を違えているし、論争もしている。ネグリはこの本を批判もしている。
続きを読む “世界の経済覇権がどのように推移したか”「枯草の根」陳舜臣、1961年発表、講談社
陳舜臣氏の初期の作品はこういうミステリーものだった。しかしすぐに歴史ものや紀行文学に移っていって、このミステリーものは数が少ない。
この本は江戸川乱歩賞受賞作品である。彼の37歳の時の作品である。
なぜこの作品を読むのか。
「アジアの中の沖縄」でも取り上げたが、中国人の視点、それに台湾、日本の神戸の視点が入り混じって、アジア的な視点を持つ人だと思ったからだ。この人ほど、歴史の中のアジア、現代のアジアのことを感じて生きた人はいないのではないか。
続きを読む “神戸の中国人のミステリー”