250827
網野義彦、蒙古襲来、岩波書店、2008年、網野義彦全集第5巻(全18巻)
蒙古襲来を続けて取り上げる。
前回はモンゴル中心の旗田巍の本から理解できたことがあった。そこでさらに今回は網野義彦の蒙古襲来を紹介して見たい。また別の興味深い視点がある。
朝鮮の歴史についての固有の観念が歴史の見方を左右する。
まずこの関係の本を読んでいると、つまるところアジアの歴史と国家観にその歴史家はたどり着くようになる。日本人にとっては、特に朝鮮に対する意識がどのようなものであるかという試金石となる、ということを知った。蒙古の襲来、つまり元寇がどのようなものであったとしてもどうしても高麗の状況を知らなくては書けないということもあり、この高麗に関する観点が非常に重要となる。その観点がその歴史家を大きく分けていくことになる。大きく分かれるとは極端に言えば差別意識かまたは同情的意識に分かれる。あるいはこの問題は朝鮮統治が良かった論、と犯罪論に分かれるようなところもある。自虐的歴史観への批判とか、慰安婦問題、さらに日韓の謝罪問題にまで波及する。
(慰安婦問題は、「帝国の慰安婦」ー植民地支配と記憶の闘い、朴裕河著、朝日新聞出版、2014年11月発行に詳しい。この作家も政治的には解決したという立場である。過去にそれを韓国政府が後押しした。またこの作家は日本に与しているかのごとき立場を示しているので韓国の人達から反感を買った。これが冷静で客観的であると思えるのだが。)また客観的に歴史を見ろということもよく言われるがなかなか難しい。その難しさがこの高麗の見方ということにも反映される。日本には朝鮮統治で特に大きな問題はなかった、むしろ中国の植民地になるのを避けさせた、という議論もある。また朝鮮統治のころの朝鮮人のインテリが書いた本もあり、その本には日本統治の方がよかった、ということを言っている。そういいう予想に反したような本もかなり出版されていて歴史修正主義とか言われる。有名な歴史家も同様な事を言っており、、案外簡単に客観的歴史というものがあるわけでもない。要するに朝鮮半島の歴史は歴史家の認識を明白に分けていく。つまり蒙古襲来もそういう点では興味深い日韓の問題が隠されている。(第二次世界大戦で日本が悪いのか悪くないのか、というような問題についても同様で前提を明確にしないと議論にならないことが多い。)
網野の本の概略
網野義彦の蒙古襲来はいろんな論点を含んでいる。当時の所領の帰属関係、特に売買をして御家人の所領が民間人の所領となっていることが多くその裁判の資料がたくさんあるということである。この問題がのちに蒙古襲来後に活躍した武将への褒章問題と絡んで、大きな政治的な課題となり徳政令などを発するも鎌倉幕府の衰退は止めようがなかった。商業の発達、金銭の流通などからいろんな経済的な矛盾が噴出しているときであり、土地所有関係の複雑化、法律でぎょしきれない問題があっちこっちで起こっていた。ある意味の鎌倉幕府の終わりの始まりの時期でもあった。また思想的な問題、農民や被差別民の塗炭の苦しみを反映して日蓮が登場し、いろんな予言を行いかつ政府への批判も強烈であった。宗教統制もあり、日蓮を排斥していた。そういう状況的な視野もふんだんに書かれている。
現代の戦争との共通点
以上はこの本の概略であるが、私はこの本から感じることがあった。このいろんな国からなる連合軍というのは結構戦意がなかったのではないかという事だ。
網野は指摘する。2回目の蒙古襲来では、中国南宋の軍(江南軍)とモンゴル軍+高麗軍(東路軍)という連合軍の戦意の問題、高麗軍にあるぎくしゃくした関係、連絡の齟齬などがあって敗北したのではないか、という。
私はこの網野義彦の蒙古襲来を読んで、日中戦争、、ベトナム戦争、現代のウクライナ戦争などを思い浮かべる。彼も書いているが確かに台風がやってきたことも事実であはあるが、大義なき戦いというもののもつ重大な欠陥を意識させられる。守勢に入る方には国を守らなければならないという大義がある。一方攻める側にはさほどの大義がない。こうなると戦意の問題が必ず付きまとう。
ベトナム戦争もそういう意味ではアメリカが出ていく大義はさほどなかった。むしろホーチミン政府には大義はあった。そこに戦意の差が大きく立ちはだかったように見える。
なぜか大義のない戦いは敗北への道が用意されている。絵にかいた大義があればいいというものではない。兵士やそれを統率する国家でも真実戦うに値する戦意というものがない側は本当に負ける、というのが歴史上の事実としてあるだろう。当然例外もあるにはある。しかし一般的に言えば最近の大戦争では第二次世界大戦、ベトナム戦争、ウクライナ戦争など見るとそういうことが言えるかもしれない。戦意高揚などと一言でいうが、兵士一人一人にそういう戦意というものがない場合、あるいは戦争目的が理解されない場合はどんなに軍事力があっても敗北するのではと考えられる。
結論的には
ここからウクライナ・ロシア戦争の行くへは相当分かりやすくなってくるのではなかと思う。
これも戦意なき戦いをロシア人が戦っている上に彼らは連合軍である。傭兵も多い。どうやって戦闘任務がわけられるのか。闘いの連携、組み合わせなど、連絡などが難しいのではないだろうか。この道筋も次第に見えてくることになるのではないか。そう思わせられる蒙古襲来である。